民法改正で「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ
欠陥や隠れた傷など目に見えない不具合のことを瑕疵(かし)と言います。不動産取引における「瑕疵担保責任」とは、売主様が負うものです。物件に不具合があった場合、買主様は損害賠償請求や契約の解除などができます。たとえば、物件を引き渡した後、3カ月の間に「実は雨漏りがある」などの問題が生じた場合、売主様が瑕疵担保責任を負うのが民法上の義務だったわけです。
「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ
民法の改正案が2017年に成立。改正民法が2020年4月1日から施行されました。変更点は多岐に及びますが、「瑕疵担保責任」も例外ではありません。従来の「瑕疵担保責任」の概念が消滅し、「契約不適合責任」の概念が新たに設けられたのです。
契約不適合責任はその名が示す通り、物件が契約の内容に適合しない場合に生じる責任のこと。瑕疵担保責任と同じく、売主様が負うべき責任になります。異なるのは流れです。従来の瑕疵担保責任では、売主様に瑕疵のない物件を引き渡す責任はありませんでした。売主様の責任は、物件を現状のまま買主様に引き渡すこと。その上で、万が一、引き渡し後に目に見えない、隠れた瑕疵が見つかった場合、買主様が売主様に損害賠償を請求するのが通常の流れでした。
一方、新たに設けられた契約不適合責任では、売主様は契約内容に合致した物件を買主様に引き渡すことが求められるようになりました。契約書に書かれていない不具合はすべて売主様が責任を負うことになります。ポイントとなるのは「契約書に書かれていること」です。そのため、たとえば契約書に「雨漏りあり」と記載されていれば、引き渡し後に雨漏りで売主様が責任に問われることはありません。
「瑕疵担保責任」に認められていた免責特約
ある中古住宅の話です。その物件は昭和52年(1977年)に建てられたもの。築45年を超えるとなると、仮に買い手が見つかったとしても、引き渡し後3カ月以内でなにか不具合が出るのは間違いありません。売主様としても、引き渡した後に10万円、20万円と修繕費用がかかっては大変です。そこで不動産会社が提案するのが、瑕疵担保責任免責という特約でした。
瑕疵担保責任免責は、不動産会社と売主様が相談の上、販売図面などに「建物の瑕疵担保責任は免責とする」と明記するだけ。不動産会社は、その物件をレインズに登録する際、「瑕疵担保責任免責」と備考欄に付記します。それを見れば、他の不動産会社も物件の古さがわかるとともに、引き渡し後に不具合が生じても保証がないことを見込みのお客様に説明し、案内するのが暗黙のルールでした。
また、免責の代わりに「瑕疵保険」を用意して「この保険で対応できます」と売主様に説明していた大手の不動産会社もあったようです。
契約不適合責任の免責特約での注意点
契約不適合責任でも「免責特約」は認められています。ただし、契約不適合責任では、免責事項の内容をすべて具体的に記載する必要がありますから注意が必要です。ちなみに、契約不適合責任免責に適用されるのは建物のみで、土地には適用できません。
お住まいを売却する場合、築25年以上が経過している物件は免責にしたほうがいいでしょう。古い物件は、自分でリフォームしたい買主様が興味を示すことが多く、売主様が手を入れないほうがいいからです。ただし、免責にする代わりに売り出し価格の値下げや多めの値引きを他の不動産会社から求められる場合もあります。
また、稀にですが、築浅にもかかわらずレインズの備考欄に「瑕疵担保責任免責」と記載されている物件がありましたが、これは「任意売却」のケースがほとんどでした。住宅ローンが払えないために住まいを売却するのに、修繕費が捻出できるわけがないのがその理由です。
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